今、自分が松本で使っている事務所ですが。東京に出たお医者さんのお宅です。10年前に跡継ぎが東京の方に行って帰って来なかったのですが。旧松岡医院という古い洋館づくりで、雨漏りはするわ、ごみは捨てられると、大家さんはもうやりきれないというわけですよね。これを壊せという人があって…その話を聞いて、僕はちょっと待ってくれと。それで私は塩尻にいたのですが、結局、事務所として借りることになっちゃったんですね。それを300万の壊すお金をとにかく直す方に回してくれと、金がないので、あとは自分で少し直すということで、結局600万円近いお金になったのですけれども、それでもとどおりにして、ガラス1枚で寒くてどうしようもないですけどね。いずれにしても、全体の町並みとしてだけでなく、そればかりじゃなくて、自分たちだって1つ1つのものが、そこに面していなくても、何かまちに、まちのことが好きで少しでも、新築以外でもできるわけで、そういうことも含めて、今、まちは一体どうなっているんだという、テーマで見ることがあるならば、そういうやり方がいいのじゃないかなというふうに思います。
 まとまらないお話でどうも失礼しました。(拍手)
○司会 今の本当に全く古い建物を全く違う新しいイメージにまた変える。そうは言っても古いイメージが残る、非常に不思議な世界で、例えば保存とか、あるいは守るとかというようなことが一般には文化財を守るとかということがありますけれども、今の川上先生のいろいろのお仕事を見ていると、小さな有(ゆう)がまた大きな有(ゆう)に変わっている。つまり有るものがまた大きく有る。決して無から有をつくるというわけではなくて、何かそこにもともとあったものを何かもっと取り出していくという、そういういろんな事例を設計されて…実は裏町のはしご横町について、インターネットでそれをキーワードで検索してみますと、1万件くらいヒットしますね。つまり、皆さんあそこに行ってきましたという、そういうブログとか、日記とかというのがいっぱい出ていまして、実はかなり遠くから皆さん、はしご横町へ行ってきましたというタイトルで出ています。つまり縄手通りにしても、はしご横町そういったものに…若い皆さん方も非常に何かそういった昔から皆さんが若いころからずっと感じていた懐かしいものや、それも逆に新しいもの、非常に自分たちには非常にモダンなもののように感じて、集まっていると思います。
 今日も、川上先生の色々な設計とか、まちづくりの紹介を皆さんに見ていただいて、こういうものがこうなるのだというようなイメージが大分入ったと思いますけれども、今日2時間半ちょっと、先ほど午後2時から4時半過ぎまで三角八丁という、秋宮から春宮に至る中山道界隈を川上先生と20名近くの参加者で町歩きを行い、かなり川上先生にもいろんなお話をしていただき、建築に関すること、町並みに関すること、いろんなことをお話していただいたり、それから今日一緒に歩かれた皆さんの中からここはこういうところだったんだよという、何か昔はこうだったんだよとか、そういう話も今日は伺いました。実は、参加された皆さん、初めて聞くお話だったと思いますけれども、私も今日は本当に驚くような勉強になることがありまして、下諏訪のまちがまたすごく好きになりました。