下諏訪町は、その歴史性故に、市街地である三角八丁領域においては、僅か1km四方程度のエリアの中に江戸〜昭和までの建造物が重層的に市街地を形成し、他地域からみても貴重な趣を残しています。また、下諏訪町の特徴として、多くの市町村が商業、観光(歴史)、工業といったカテゴリー別の町並みを有している場合が多いのですが、下諏訪町はこれらが、非常に狭いエリアに混在している。その点からも、全国的には例外的な町並みを持っているといえるでしょう。

しかし、下諏訪町も他の日本各地と同様に、郊外への商業施設の流出による市街地の空洞化現象が顕著に現れ、商店街では空き店舗が目立ち、中仙道界隈でも歴史的な建造物の維持困難な状況からその維持保全に対して大きな転機を迎えています。
これは、第2次大戦後、アメリカ型のライフスタイルが日本に浸透し、大量消費型文化を嗜好され、郊外へ商業施設、マンションといった住環境が移転していった結果であることは誰もが分かっていますが、現実的には、それに対する解決策は見えていません。しかしながら、近年では、このかつての右肩上がりの経済の時代に用いられた施策の反動として、現在の低成長時代を迎えると、特に市街地中心街を中心に、地域基盤経済の弱体化、地域連携の衰退、若年層の流出による市街地住民の高齢化、犯罪増加といった弊害が顕著に現れてきており、社会的な停滞感が蔓延してきていることも事実です。

つまり、町並みを失うことは単に歴史的なノスタルジーの問題ではなく、多くの日常の生活に関する重要な課題につながる、大事な問題案件なのです。

こういった課題に対して、米国には全く範は見当たらず、むしろ、イタリアやドイツといった、日本と同様に戦後、敗戦国として急激に経済を発展させてきて、同様の問題を抱えてきた欧州によい事例が見当たります。