文化財を残すことについて、大事だということは解るけれども、残すのはそう簡単ではないというのが一般論です。しかし、残すためにできることは意外に、単純なことで最低限の町並みは残せることはできそうです。

左写真は奈良県の今井町の例ですが、外側は古い姿を残していて、内部は現代風に改造して暮らしやすいようにしています。実はこれは今井町が町民のために作ったモデルハウスです。下諏訪の場合、幸いに前述した案件をはじめ、御田町界隈に改造サンプルとして使える事例を幾つも作ることができました。これらの事例が、今後の下諏訪の町づくりのひとつの方向性として多くの人に考えてもらうきっかけになればと思っています。

私的には、下諏訪の町並みを考えていくことは実は下諏訪町にとって重要最優先課題ではないかと思っています。何故ならば、経済状況が低成長期に入っているのにも関らず、施策の多くは高度成長期の手法が未だに焼き直されている事が多く、市街地の衰退に対して歯止めがかけられていない実情が継続し、その現状に覆う被さるように、市街地の建物が個人のがんばりで維持されてきたものが、所有者の高齢化、世代交替、維持負担の増加、所有者の転出等の理由により、市街地の景観維持に限界が来ていることについて未だに具体的な施策が打たれていなように感じているからです。仮に今の状況を放置すれば、おそらく、下諏訪の町並みの崩壊は雪崩的に始まるでしょう。私的には、前述したような事例や制度を活用すれば、下諏訪としての下諏訪なりの市街地の景観維持も含めた、町並みを「質的開発」した施策がつくれるのではないかと考えています。何故ならば、下諏訪は、何もないわけがなく、長い歴史に培われてきた様々な資産があると確信しているからです。