私も松本であちこちウオッチングしていますけれども、意外と知らないですよね。町長さんも、もしかしたら知らないかもしれない。そういうことも含めて、何か視点を変えますと全然見えなかったものが見えてきたりして、新しい発見があって、そこからまちづくりということが考えられると思うんです。また、たまたま私は民家づくりをやっていて、且つ木造をやっていて、私も53歳になりまして長いことそういう木造民家を直していますと、だんだんと大きなものに携わるチャンスというか、きっかけがありまして、町を作るような仕事をするようになりました。
 前置きはそのくらいにしまして、まず松本について話します。松本のまちは5カ年計画で、もう第8次になっていますが、松本はご存じですかね、何しろたくさんの10年計画があります。それで今、まちづくり事業で、裏町という町に関わっています。ここは、お城から東南の方向ですか、この辺の事業がもう7割から8割方事業が進みまして、再開発、区画整理事業ということで進んでいます。
 それから、仲町といって、ここを蔵のあるまちということをちょっとお手伝いしました。ここは生活を中心にしたまちづくりということで、白壁が多いということですが、いいか悪いかは別ですけれども、確かにまちが、がらっと変わりました。
 まちづくりの事例として文化の薫る情報発信都市松本と唱って約30年から20年ちょっと前です。仲町の蔵のあるまち、これはテーマです。「蔵のあるまち、仲町」ですから、蔵づくりというコンセプト、デザインコードを決めて進めているわけですね。しかしここは明治に大火があって、何軒か古い蔵がありましたけれども、多くの蔵は、大正時代、明治の終わりから大正時代に盛んに建てられたというものでこれが残ったものですから、じゃあ蔵づくりのまちにしようということで、ある意味本物ではないですけれども、はじめたのです。
 まず、「蔵づくり仲町」の拠点をつくりたいということで、廃業したお酒屋さんの建物を松本市がこれに手を挙げて買い取りこれに充てました。最初はこの建物を壊してマンションにするという計画があったのです。この建物は一度全部解体して、新築と古材を組み合わせて、代表的な拠点として市が4億かけてつくりました。だけども、運営は地元の人たちの町内会です。貸し店舗、貸しオフィス、貸し茶屋と、それでお茶をやったり、お花をやったり、ショーをやったり、着物をやったり…。特殊な例だと思うのですが、松本市がつくってくれて、管理は地元と。だから、管理運営費はただということですね。やっていることは、公民館風に使っています。
 また、「蔵のある町仲町」ということで、1区画にこの当時、市から150万補助金が出たんですよ。歯抜けの駐車場になっていたところを、地元の組合がこういう状態ではまずいということ塀をつくって、管理事務所を張りぼてですけれども蔵風につくり、並びの白壁使って絵をかいてりしました。その後、この区画は景観賞をいただきました。
 それからお城の近くに上地(あげち)という、明治時代に堀を埋め立てて、歓楽街をつくったところがあります。今では大正ロマンをしのぶような歓楽街の名残が残っていて、写真館にしても喫茶店にしても、表面は看板建築ですが、後ろは木造づくりですね。